コラム

「ヒップホップ」と「ラップ」の違いとは?

近年、お茶の間でも「ヒップホップ」「ラップ」という言葉が浸透してきていますが、この二つの言葉が意味するところはイコールではありません。

今日の記事ではこの二つの言葉の違いについて解説します。

「ヒップホップ」と「ラップ」の違いとはカルチャーであるか否か

いきなり結論から言うと、「ヒップホップ」と「ラップ」の違いとは(ヒップホップ)カルチャーであるか否か。ということです。

これだけではわかりにくいと思いますので、詳しく解説していきましょう。

「ラップ」の起源とは?

「ラップの起源」となると、アフリカの伝統的な音楽や、マルコムXなど黒人指導者の演説、ギル・スコット・ヘロンの詩を読むようなヴォーカルスタイルもルーツにある、など諸説ありますが、一般的に「ラップ」という言葉が認知され始めたのは1979年、Sugarhill Gangの「Rapper's Delight」がビルボード入りするヒットを記録してから。と言えるでしょう。

また、同じく1979年にはファンクバンドのThe Fatback Bandがリリースした「King Tim Ⅲ」という曲もヒット。ここから「ラップ」「ラッパー」(ラップをする人)。という言葉がアメリカから世界中へと広がっていきました。

The Sugarhill Gang - Rapper's Delight (Official Video)
Sugarhill Gang"Rapper's Delight"

元々はMC(Master of Celemoniesの略)がニューヨーク、ブロンクス地区のブロックパーティーに集まった観衆を盛り上げるため、DJの横で使っていたフレーズに目をつけたのが、先に述べたSugarhill Gang「Rapper's Delight」を生み出したシュガーヒル・レーベルの創始者、シルビア・ロビンソンでした。

彼女はクラブのドアマンなどに声をかけ素人集団の即席グループ(Sugarhill Gang)を組ませ、ニューヨークで盛り上がっていたブロックパーティーで使われていた、音源化されていないフレーズをつなぎ合わせてヒット曲を生み出しました。

もちろん勝手に自分達が使っていた歌詞を盗まれた方はたまったものではありません。

ブロンクスの伝説的グループ「COLD CRUSH BROTHERS」のメンバーであったGrandmaster Cazが「Rapper's Delight」の歌詞の元祖(歌詞を盗まれた側)として知られていますが当然、レコードがヒットしても彼には一ドルもお金なんて入ってはきません。

そんな背景があるので、「Sugarhill Gangはヒップホップではない」

と未だに認めないヒップホップ好きもいるほどです。

さて、この「〜はヒップホップではない」

という論調、日本でも聞いたことはありませんか?

こうした言葉の意味を知るにはもう少しヒップホップカルチャーの背景を知る必要があります。

ヒップホップカルチャーとは?

ヒップホップカルチャー黎明期のブロックパーティーでDJの横について観衆を盛り上げるため使われていた早口フレーズはラップの起源となりましたが、ラップ=ヒップホップではありません。

ヒップホップとは4大要素から成るカルチャーで

  1. DJ
  2. MC(ラップ)
  3. ブレイクダンス
  4. グラフィティ

これら4つそれぞれに長い歴史があり、詳しくはまた別の記事で触れようと考えていますが、

今日の記事のテーマに沿った「MC(ラップ)」だけでなく、これら四つの要素に共通の価値観があります。

それは、他人のスタイルを盗まず自分のオリジナリティで勝負すること

たとえば売れている人のモノマネをして上手く自分の利益にするなど、パクリは基本的にヒップホップカルチャーの中ではタブーとされています。(最初は他人のスタイルを参考にして、最終的に自分らしさを身につけるのであればOK)

これはZeebraがKJ(Dragon Ash)に自分のラップスタイルを盗用されたとしてDisソング「公開処刑」を作った例が分かりやすいところです。

「ヒップホップ」というカルチャーを盗まれることへの抵抗

ニューヨークの街の片隅から産声を上げたヒップホップというカルチャーは、

元々が貧しいマイノリティの黒人たち(ヒスパニックも含む)が始めたものでしたが、

ラップが進化して多額の金を生むようになり、全米へと広がっていく中で、

カルチャーが盗まれることに対して何度も抵抗を示しています。

M.C. HammerやVanilla Iceはラップを自らの音楽に取り入れて、大きな商業的成功を収めましたが、「ヒップホップではない」とDisされましたし、ヒップホップのスラングとして「セルアウト(Sell out)」という言葉もあります。

売れるためにヒップホップ的な要素を薄めて大衆に寄せることをセルアウト(己を売り渡す)と言い、ヒップホップカルチャーを愛する人々からは忌避されてきました。

現在の日本語ラップシーンでも、必要以上にポップなアプローチをしているラッパーは、

「あいつは単なるラップでヒップホップではない」などとDisされるのも同じ構図です。

まとめ

現在ではヒップホップは世界中を席巻し、薄めないありのままのヒップホップ音楽がビルボードの上位を占めるようになり、かつてよく使われた「セルアウト」という言葉も昔ほどは説得力がなくなってきています。

しかし、ヒップホップとは元々がさまざまな要素が複合してできたカルチャーであるため、

早口で韻を踏んで歌っているからと言ってもヒップホップではない

という考え方があるのも事実です。

たとえば前述したThe Fatback Bandは数々の名作を残したFunkグループですが、Sugarhill Gangよりも早く「ラップ」を楽曲に取り入れたからといって、「Hiphopの元祖」とされることはほとんどありません。

「ヒップホップ」と「ラップ」この両者は楽曲を聴いただけでは区別がつかなかったり、人それぞれがヒップホップをどう捉えるかによっても変わってくるので定義することは非常に難しいのですが、

同じ「ラップ」のように見えても

  • ヒップホップカルチャーに敬意を持ち、ラップという表現方法で自分らしく歌っているもの=ヒップホップ
  • 表現方法の一つとして早口で韻を踏んでいるもの=ラップ(ヒップホップではない)

と言えるのではないでしょうか

たとえばヒップホップのことを全く知らない、カルチャーに対して敬意のないアイドルやYoutuberが、表現方法として早口で韻を踏んで歌っていても、それはヒップホップではないわけです。

逆に言えば、ヒップホップカルチャーに深く根ざした活動をしているラッパーが、ややポップに見えるアプローチをした場合、「あいつはセルアウトした」とDisする人もいるかもしれませんが、「あいつのやることならヒップホップである」と捉える人もいるでしょう。

このように、今日の記事はなかなか定義の難しい問題について記しましたが、みなさんの参考になりましたら幸いです。

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BB

BBです。洋楽・邦楽問わずHIPHOP・R&B・Black Music全般が好みです。 本ブログでは海外のヒップホップ・日本語ラップ・R&B・SAMPLING SOURCEなどなど、名盤のレビューやコラムを中心にHIPHOPカルチャー全般について記していきます。

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